いわゆる「共謀罪」の制定に抗議し、速やかな廃止を求める会長声明
6月15日、参議院本会議において、いわゆる「共謀罪法案」が強行採決され、「共謀罪」が制定されました。
当会は、この法案の問題点について繰り返し指摘し、「共謀罪」の制定に強く反対してきました。また、日弁連や全国の弁護士会連合会、弁護士会が同様に反対を表明してきたほか、日本ペンクラブ、労働組合などの多くの団体、個人が、相次いで「共謀罪」は表現の自由やプライバシーの権利を侵害する旨の警告を発し、制定に反対しました。国際的にも、国際ペンクラブが同様の警告を発したほか、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明しています。内外からの批判、反対表明や懸念・警告は、枚挙にいとまがありません。
ここまで多方面から強い反対や批判・懸念が示されたのは、主体とされる「組織的犯罪集団」や、行為とされる「計画」「準備行為」の概念が曖昧であることが大きな理由です。さらに、政府は法案の目的を「テロ対策」と強弁していますが、対象となる犯罪は277にも及び、テロとはおよそ無関係な犯罪も多数含まれていることも大きな理由です。かかる曖昧さや広汎さからすると、仲間と話をする、ATM機で預金を引き出す、等々、外形的には日常行為と何ら変わりない行為が対象となりうることになり、これではどのような行為が「共謀罪」に該当するのか、「共謀罪」と疑われてしまうのかはっきりせず、市民を萎縮させてしまう効果は計り知れません。「共謀罪」が思想・信条の自由(憲法第19条)や信教の自由(同第20条)、結社の自由・表現の自由(同第21条1項)等を侵害する危険が極めて高いといわれるゆえんです。
この点、法務省のホームページには「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪を共謀した場合に限って成立する」としています。しかし、たとえば国会審議の過程において法務大臣が「一般人は捜査の対象にならない」と述べていたにもかかわらず、盛山正仁法務副大臣は一般人が捜査対象となる可能性を認めるなど、政府答弁は二転三転してきました。このように、あまりに基本的な疑問や不安についてすら満足な説明ができず、むしろ説明すればするほど矛盾が生じてきたことを私たちは目の当たりにしてきました。国会審理が進むにつれ、法案に反対の世論が増えてきたのは、当然のことと言えましょう。
このように、国内外からさまざまな批判や懸念があるにもかかわらず、これらを解消する法案修正を行う、あるいは、納得いくまで説明を尽くす等の努力を放棄し、衆議院では法務委員会で強行採決が行われ、参議院では、あろうことか「中間報告」という異例の手段を用いて法務委員会の議決すら経ず、本会議で強行採決が行われました。度重なる数の暴挙は、もはや議会制民主主義を破壊するものというほかありません。
当会は、かかる暴挙に強く抗議するとともに、「共謀罪」の速やかな廃止を求め、また議会制民主主義の回復に向けて、今後も全力で取り組んでいきます。
2017年(平成29年)6月23日
札幌弁護士会
会長 大川 哲也