声明・意見書

2019年(令和元年)度司法試験合格判定にあたり、法曹の質確保のため適正かつ厳正な判定を行うよう求める会長声明

 2019年(令和元年)の司法試験の最終合格発表が9月10日に行われます。
 2019年(令和元年)度司法試験の受験者数は4466人、短答式試験合格者数は3287人でした。2011年(平成23年)の司法試験受験者数は8765人(出願者数は1万1891人)であり、その後司法試験の受験者数の減少が続き、本年度は2016年(平成28年)度から2433人減、2017年(平成29年)から1501人減、2018年(平成30年)から772人減となっています。このように法曹志望者の激減が止まらない状況にあります。
 法曹養成制度改革推進会議は、2015年(平成27年)6月30日に、司法試験の合格者数を年間1500人程度は輩出すべきとする決定を出しましたが、同決定は、同時に「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないことに留意する必要がある」と指摘しています。
 しかし、この間法科大学院制度の改革に関しては、本年6月19日に国会において法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案が可決され、いわゆる法曹コースの導入・ギャップタームの解消などの改善策を採ることが決定されただけで、未だ途上というべき状況です。
 2016年(平成28年)以降、1500人台の合格者数となっており、受験者数が大幅に減少しているにも関わらず、合格者数だけが維持されている状況が続いています。今年度も昨年度以上に司法試験受験者数が減少している中で合格者数確保が優先され、仮に1500人程度の合格者が輩出された場合、合格ラインが大きく下がり、司法試験の持つ選抜機能が一層大きく損なわれ、法曹の質が確保できなくなることが懸念されます。
 裁判官、検察官、弁護士は、法曹として司法制度を支えています。司法は国民の権利義務に直接かかわり、人権擁護や社会正義の実現を担っています。法曹の質の維持、向上は、国民にとって最重要の課題の一つです。
 司法試験委員会に求められているのは、司法試験合格判定にあたり、司法制度を担う法曹に必要とされる素養を厳正に判定することです。
 そこで当会は、2019年(令和元年)度司法試験の合格判定につき、「1500人程度」との合格者数確保にとらわれず、司法の重責を担う法曹として必要な学識と応用能力(司法試験法第1条1項)の有無について、適正かつ厳正な選考・判定を行うよう求めます。

2019年(令和元年)8月1日
札幌弁護士会
会長 樋川 恒一

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