死刑執行に抗議する会長声明
2019年(令和元年)8月2日、2名の死刑が執行されました。昨年12月27日に2名の死刑が執行されて以来の執行であり、令和に改元後初めての執行となりました。また、第2次安倍内閣において死刑が執行されたのは16回目、合計38名に対して死刑が執行されたことになります。
死刑は生命を奪う刑罰であり、誤判の場合、事後的な回復が不可能です。そして誤判・えん罪の危険が現実のものであって、誤った死刑が執行されるおそれが否定できないことは、これまでの複数の再審開始決定が明らかにしています。なお、本日死刑が執行された2名のうち少なくとも1名は再審請求中であることが確認できています。
国際連合の自由権規約委員会は、日本の第6回定期報告に対する最終見解(2014年7月23日採択)において、死刑判決に対する必要的な上訴制度がないこと、再審請求に死刑の執行停止効がないことなど、日本の死刑制度には国際人権基準の観点から問題があると指摘しています。
そもそも国際社会においては、死刑廃止に向かう潮流が主流です。2018年(平成30年)12月17日には、国連総会において、死刑の廃止を視野に入れた死刑の執行停止を求める7回目の決議が、これまでの最多の121か国の賛成により採択されています。また、2018年(平成30年)12月末日現在、死刑を廃止又は停止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)は142か国に及び、世界の3分の2以上の国において死刑の執行がなされていません。
このような死刑制度が抱える重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日、第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、2020年までに、死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言しました。また札幌弁護士会は2019年(平成31年)2月26日「死刑執行の停止及び死刑制度の廃止を求める決議」を臨時総会において採択し、国に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を直ちに停止し、速やかに死刑制度を廃止することを求めています。
今回の死刑執行は、このような死刑制度を巡る国内外の情勢の変化並びに人権擁護大会における上記の宣言及び当会の上記総会決議を無視するものであって、極めて遺憾です。
当会は、政府に対し、直ちに死刑の執行を停止し、速やかに死刑制度を廃止することを求め、今回の死刑執行に対し強く抗議します。
2019年(令和元年)8月8日
札幌弁護士会
会長 樋川 恒一