声明・意見書

「札幌市成年後見制度利用支援事業」の拡充について(要望)

令和2年11月20日

札幌市長 秋元克広 様

札幌弁護士会
会長 砂子 章彦

司法書士会
会長 後藤 力哉

(公社)北海道社会福祉士会
会長 神内 秀之介

(公社)成年後見センター・リーガルサポート札幌支部
支部長 千貝 愛

 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、日頃は私共の活動に対しご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、現在、貴市において実施されている成年後見制度利用支援事業については、同事業の実施要綱が市長申立案件に関するものであるため、申立費用及び成年後見人等に対する報酬の助成対象も市長申立事案に限定されている状況にあります。しかしながら、このような限定は、貴市が果たすべき地域福祉の増進を阻害しかねないものです。
 そこで、以下のとおり要望いたします。

第1 要望の趣旨

  1.  申立費用及び成年後見人等に対する報酬の助成対象を市長申立ての事案に限定せず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合も費用助成の対象となるように、札幌市成年後見制度利用支援事業実施要綱を改正すること。

第2 要望の理由

  1.  成年後見制度は、認知症高齢者及び、知的障がいや精神障がいがあり判断能力が不十分な人たちの権利擁護を図る社会保障に不可欠の制度でありますが、その利用はいまだ十分とは言えません。そのため、平成28年5月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、平成29年3月には成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」といいます。)が閣議決定されました。そして、市町村には成年後見制度の利用促進のための具体的な施策が期待されております(同法14条)。
  2.  成年後見制度利用支援事業については、平成20年3月28日付厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の事務連絡及び平成20年10月24日付厚生労働省老健局計画課長の事務連絡において、その対象が拡大され、費用の助成は市町村長申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についても対象となり得るものとされています。
     これらを踏まえ、基本計画においては、「成年後見制度利用支援事業が市町村長申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等を契機とする場合をも対象とすることができること」を市町村において検討することが盛り込まれました。
     また、同省においては、例年開催されている全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議及び障害保健福祉関係主管課長会議において、成年後見制度利用支援事業について、各市町村に対し、市町村申立ての場合に限らず、本人や親族からの申立て等も対象とすることの検討を周知、助言をすることが繰り返し求められており、この点は令和2年3月開催の直近の会議においても確認されております。
  3.  超高齢社会、無縁社会と言われる昨今、成年後見制度はセーフティネットの一つであり、権利擁護の最後の砦でもあります。本人の資産が乏しく、費用負担が困難であるという理由から成年後見制度の利用ができない、という事態はあってはなりません。
     そのためには、市町村長申立て(以下「首長申立て」といいます。)に限らず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合であっても、本人の資産の中から費用を支出することが困難な事案について、費用が確保されることが必要不可欠であると考えます。
  4.  現在、政令指定都市20市のうち、費用助成について首長申立てに限定していることを表明している市は、岡山市、福岡市、北九州市、熊本市、札幌市の5市のみであり、札幌市近隣の市町村では、石狩市、江別市、北広島市、小樽市、伊達市、当別町、喜茂別町、京極町、赤井川村においても、首長申立てに限定しておりません。
     また、厚生労働省が取りまとめた「令和元年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)」によれば、全国においては、約半数の市区町村が本人申立事案等を報酬助成の対象としており、さらに北海道の取りまとめによれば、道内においても、平成31年4月1日時点で、179市町村のうち、133の市町村が首長申立てに限定せず本人申立事案等を助成対象としております。
     札幌市においても、問題意識は共有いただいており、昨年度には他の政令指定都市の報酬助成制度の予算規模に関する調査に着手されたと伺っておりますが、折からの新型コロナウイルスの感染拡大による影響のためか、調査結果を含めた進捗に関する情報は得られておりません。
     このままの状態が続くなら、札幌市内に居住していることによって、費用助成を受けることができず、成年後見制度の利用ができなかった、という事態も起こりえます。
  5.  以上により、札幌市成年後見制度利用支援事業実施要綱を、市長申立ての事案に限定せず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合においても費用助成の対象となるように、改正することを強く要望いたします。

以上

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