声明・意見書

司法試験合格者数を直ちに減員することを求める会長声明

 2022(令和4)年9月6日、本年(令和4年)度司法試験の最終合格者数が1403人と発表されました。前年度に比べ18人減少したことになります。
 政府の法曹養成制度改革推進会議は、2015(平成27)年6月30日、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきとしており、本年度の最終合格者数もこの目標を下回ることになりました。
 しかしながら、前年度における司法試験受験者数は3423人、最終合格者数は1421人のため、その倍率は2.41倍であったのに対し、令和4年度司法試験受験者数は3082人(前年度から341名減)であるため、その倍率は2.20倍となります。このように、前年度との対比で受験者数が9パーセント余り減少しながら、最終合格者数がほとんど減員されることなく、むしろ倍率が下降したという結果は、1500人程度の司法試験合格者輩出という上記目標に過剰に配慮したとの懸念が生じます。司法試験受験者数は毎年減少し続ける中、上記取りまとめにおける「輩出される法曹の質の確保」という留意事項に照らしても、極めて問題であると言わざるを得ません。
 そもそも、長年にわたり裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている現状では、司法試験合格者の大多数は、弁護士登録を申請することとなります。弁護士人口は、初の法科大学院修了者が卒業した15年前の2006(平成18)年3月31日時点では2万2021人であったものが、令和4年9月1日時点では4万4056人となっており、昨年に比べ弁護士増加のペースが僅かに下がったとはいえ、未だ増員が続くことに変わりはありません。
 これに対して、裁判所の民事事件新受件数は、2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少傾向は続いており、現時点でこれが増加する見込みは乏しい状況にあります。さらに、わが国の人口は少子高齢化が進行し、今後ますます減少していくことが見込まれています。これに伴い、中長期的にはわが国の紛争総数も減少していくものと考えられます。また、今後司法基盤の整備が進められ、様々な法的需要が喚起されるとしても、人口減少に伴い減少する法的需要よりも多くの法的需要が喚起されると判断すべき客観的かつ明確な根拠は見当たりません。このような中、弁護士人口増加のペースをほぼ変わらないままとすることは、ますます弁護士の供給過多を招くことになります。
 当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、政府に対し、年間1000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択しています。また、上記決議から10年以上が経過し、当会においてもあらためて検証を行い、2021(令和3)年3月31日付「法曹人口のあり方についての検証に関する提言書」を公表いたしましたが、我が国全体の人口減少や過疎化が加速する一方、現在の増員ペースを維持すべき現実的で具体的な需要が顕在化していないこと、仮に合格者数を1000人としても弁護士数の増加は続く見込みであることなどを踏まえ、現在も、上記決議を変更すべき状況にはないと考えています。もとより、当会は、引き続き過疎地への司法サービスの提供や司法基盤の整備等に取り組んでいく所存です。
 そこで当会は、引き続き政府に対し、司法試験合格者をさらに減員するよう強く求めます。

 

2022(令和4年)9月6日
札幌弁護士会
会長 佐藤 昭彦

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