「検察官による起訴の違法」国賠訴訟 適切な起訴判断、公判対応を求める会長声明
2022(令和4)年1月25日、札幌地方裁判所は、2013(平成25)年8月に北海道白老郡白老町で発生したバス横転事故に関し、2019(平成31)年3月11日に札幌地方裁判所室蘭支部において無罪判決が言い渡され、無罪判決が確定した刑事事件の元被告人の男性が提起した国家賠償請求訴訟において、検察官の起訴が違法であるとして慰謝料等の損害賠償を命じる画期的な判決を言い渡しました。
本判決は、男性が、事故原因はバスの不具合であると一貫して主張していたことに着目し、検察官は、男性の主張を排斥するに足りる証拠が存在するか否かを判断する必要があり、警察から送致を受けた証拠が足りなければ、補充捜査によって証拠を収集しなければならなかったと判示しました。そして、本件公訴提起時において検察官が現に収集した証拠及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠を総合すると、男性が有罪であると認められる合理的な嫌疑はなかったものといわざるを得ないとして、検察官による公訴提起が国家賠償法1条1項の適用上違法であると結論づけています。本判決は、我が国における捜査の実態に警鐘を鳴らし、検察官及び検察庁は被疑者の声に真摯に耳を傾けなければならないとの考えを示したと言え、この点は高く評価されるべきです。
また、本判決は、起訴の違法を理由とした国家賠償請求訴訟において、刑事裁判で開示された証拠の複製について、刑事訴訟法281条の4が規定する証拠の目的外使用に該当し、証拠とすべきではないとする国の主張を認めず、証拠として採用したものであり、この点でも高く評価されるべきです。
当会は、国に対し、本判決を真摯に受け止めること、そして検察官及び検察庁に対しては、被疑者の声に真摯に耳を傾け、より一層慎重な捜査と適切な起訴判断、公判対応を強く求めるとともに、今後も、適正な刑事手続の実現を目指し、様々な取組を続けていく所存です。
2022(令和4)年2月10日
札幌弁護士会
会長 坂口 唯彦