札幌弁護士会人権賞10周年記念交流会

札幌弁護士会人権賞10周年記念交流会

日時:2014(平成26年)年2月24日(月)
場所:東京ドームホテル札幌 ピアリッジホール 

○司会

ここから意見交換会に移りたいと思います。

女のスペース・おんの山崎さんにお聞きしたいのですが、事前アンケートに、札幌の人権団体は、人的、物的に非常に厳しい状況にあるとお書きいただきましたが、具体的なエピソードを教えていただけますか。

○山崎氏(おん)

「あした潰れてもおかしくないぞ、私たち。」というのが合い言葉のようになっています。若い後継者を育てるだけの経済的余裕がありません。本来は行政がやるべきことを私たちがやっているのですから、もう少し国や地方自治体で人件費等を出してもらいたいと思います。

○司会

子どもの虐待防止協会の間宮さんにお聞きします。会員を勧誘するために工夫しておられることは何かありますか。また、2006年の段階では380名の会員がいらっしゃったとのことですが、今はどのようになっていますか。

○間宮氏(虐待防止)

現在の会員数は250名です。会員の勧誘については、会員が学会や研修会などでさまざま発信しているのですが、若手の人たちがなかなか防止協会という団体の活動として意識してもらえずに苦労しています。

○司会

続いて、遠友塾の皆さまにお伺いします。先ほど、潜在的な受講希望者はまだまだいるはずとお話いただきましたが、およそ何パーセントぐらいの人に対応されているのですか。また、同じような自主中学教育を提供しているところは北海道にあるのでしょうか。

○工藤氏(遠友塾)

北海道内で義務教育を実質的に終えていない人は10万人を超えています。その方たちに私たちの活動を知らせること自体が大変です。多くの方が新聞を読めませんので情報を届ける手段が限られます。遠くは釧路、函館、札幌近郊では岩見沢や千歳、小樽から問い合わせがありますし、寝たきりの方から相談も寄せられます。このような勉強したいという声に少しでも応えていきたいと思っています。

本州には公立の夜間中学が35校ありますので、札幌市にもセンター校の役割を果たす公立の夜間中学を作ることを要請しています。また、大人でも小、中学校で受け入れてほしいという要望も出しました。その結果、昨年、75歳の女性が近くの札幌市内の小学校に通学できるようになりました。

あらゆる機会を通して、学ぶ機会を得られなかった人たちに学ぶ場を作っていきたいと考えています。

○司会

はまなすの里の皆さんから、どうぞよろしくお願いいたします。

○木村氏(はまなす)

私たちが人権賞を受賞した際、推薦してくれた財団法人北海道ハンセン病協会(当時)の会長が、私たちの活動の中で、中、高校生を夏休み中に青森のハンセン病療養所へ連れていく等の交流活動を評価してくれたのではないかと思っております。

小さな団体ですから、学生も年間5人ぐらいしか連れていけませんでした。たまたまその後、北海道知事として初めて、高橋知事が青森の松丘保養園を訪問されました。そのとき、元患者さんのほうから、青少年にハンセン病のことを知ってもらう活動は大変大事だから、ぜひ道もこの活動に加わってくれという要請があったわけです。その後は、道と一緒に共催事業という形で実施しております。訪問した子どもたちは非常に意識が高く、大学に入っていろいろな活動をしたり、将来自分は社会科の先生になって学校で授業をしたいと話す生徒もいます。これまで50人の派遣を実施しましたが、生徒の派遣だけでは限りがあるため、学校の先生方や弁護士の方々にもハンセン病を知ってもらう機会をつくるための企画を始めました。

2年前から、夏休みの期間、東京の東村山にある多磨全生園、それから同じ敷地内の国立ハンセン病資料館に2泊3日の合宿研修をしています。

現職の先生方も、国の施策とは言いながら、教育の立場にある先生方がハンセン病施策に加担をしたことを知り衝撃を受けていました。60年前に、先生が、ハンセン病にかかった子どもに対して「おまえは、もう明日から学校へ来るな」と言ったのです。

研修に参加した先生方が、昨年度学校の授業で取り上げてもらうためのテキストをつくりました。今、全道の中学と高校約1,000校に、2冊ずつ配りました。それから、去年12月からことしの1月にかけて、道内4カ所でこのテキストを使って模擬授業を実施し、そのことが新聞記事で取り上げられました。このような活動が次代に伝えていく一つの手段になるのではないかと考えております。

○司会

小樽人権擁護委員協議会人権教室部会の皆さんにお聞きしますが、浦河べてるの家が人権賞を受賞したことを知って、実際に訪問されたそうですが、そのときの経緯を紹介いただけますか。それから、出前授業の出張先をどのように開拓されているかについてもお話しください。

○門脇氏(小樽人権)

浦河べてるの家という団体が第2回の人権賞を受賞したと聞き、「自分たちのほかに色々な活動をしているところがあるらしい。ひとつ見に行ってこよう。」ということで、研修という形で浦河に行きました。精神の病を持つ方々の生活やその方々に対する接し方などを見て、大変勉強させていただきました。人権教室の拡大については、小学校、中学校を直接訪問して依頼することがメインですが、ある学校で人権教室を体験した先生が、転勤先の学校で人権教室を宣伝してくれるといった形で広がっていくこともあります。

○司会

エスニコさんに伺いますが、私たちにはなじみが薄い医療通訳の仕組みについて教えていただけますか。

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小樽人権・エスニコの皆様

○芦田氏(エスニコ)

医療通訳をお願いしている方々は交通費として1時間1000円が支払われる外は皆ボランティアですが、とても優秀で、医療機関特有の問題に精通している方ばかりです。依頼のルートとしては医療機関や市役所から連絡をいただいたり、外国人の方やその家族、知り合いなどから直接依頼を受けることもありますが、一番多いのは、団体会員になっていただいている2つの医療機関からの依頼です。病院の関係では年間10件から20件程度で、そのほか、HIV検査の通訳も請け負っていて、それが年間10数件ありますので、合計すると年間2、30件の依頼を受けています。

○司会

例えば語学以外で、外国の方が日本で医療を受けるときに直面する困難なことがありましたら教えていただけますか。

○陳氏(エスニコ)

病気になったとき、言葉がわからないと、病院に行きたいと思っても、自分が今どういう状態なのかを相手に伝えることができないのです。また、受診の仕方も国によって違いますし、医師の言葉や検査の方法、薬の飲み方や名前なども難しく、なかなか覚えられません。私自身の場合を例にあげると、子供が1歳のときに熱を出し、病院の先生から座薬をいただいたときに、「3分の1に切ってから差すように」と言われたと思うのですが、私はすごく焦っていて、そのまま1本を差してしまいました。そうしたら、子供の熱が下がり過ぎて、けいれんを起こし、救急車で運ばれてしまい、母親としての自信を失いました。このように、外国人が医療を受けるときに一番困るのは言葉の問題ですので、エスニコのことを知ったとき、私は大きな安心感を得ましたし、自分自身が通訳として関わりたいと思いました。それから10年以上、この活動に関わっています。

○司会

では、北海道ダルクさんにお聞きしますが、治療共同体としてのミーティングについて少し詳しく教えていただけますか。

○森氏(ダルク)

ミーティングは、10人ぐらいが一つのグループとなり、薬物を使っていた本人が、「言いっ放し、聴きっ放し」のスタイルで話し合いを行います。テーマにしたがって自分の話をするわけですが、やっぱり薬を使いたいと言ってもいいですし、もちろん刑務所に行ったことを話しても構いません。自分が人をだましたり、盗みをしたと言っても批判はされません。自分の生き方を変えたいという思いを語ったり、生き方を変えた仲間が実際にしていることを聞いて、その話から希望をもらうということもあります。

○芦沢氏(ダルク)

司法では、本当のことを言うと罪が重くなりますから、皆さん、うそつきの練習をしてくるのです。けれども、ダルクやNAでは、正直にならないと治りません。正直になる練習は大変です。「使いました」ときちんと話ができるようにならない限り、回復は難しいのです。

○司会

三角山放送局の皆さんにお伺いします。社会的な弱者のための放送ということを心がけておられるということですが、マイノリティーの方々へメッセージを伝えるためどのような工夫をされていますか。

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ダルク・三角山放送の皆様

○杉澤氏(三角山)

リスナーを増やすのと同時に収入も増やすというのは容易ではありません。パーソナリティーの皆さんには、手弁当で協力をしていただいています。私たちとしては、発信の場を常に維持していくことを最低の目標とし、それに加えて、地域の輪を広げて知り合いを多くすることが、私たちの役割だと思って活動しています。

○塚原氏(三角山)

私は札幌刑務所で女子受刑者にレザークラフト、皮工芸を教えているのですが、刑務所の職員の方から、北海道矯正展について番組で取り上げてはどうかというお話があり、それがきっかけで、苗穂ステーションという番組が誕生しました。

刑務所の中では、収容されている人同士で、自分の身の上は一切話してはいけないことになっているそうですが、受刑者からは、放送を聞いて、自分と同じような人がいるとか、頑張ろうと思っている気持ちは同じだとかと共感するコメントを多くいただきます。この放送はインターネットでも流れますので、世界中で聞けるのです。ですので、私は、「あなたの決意はみんなに宣言しているのですから頑張ってね」「自分の気持ちをいっぱい吐露して、自分だけ悩んでいるのではなくて、そういう人もいるのだなと思いながら頑張ってください。」という話をしています。

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