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5月29日、参議院本会議において、消費者庁設置関連3法(消費者庁及び消費者委員会設置法、消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律及び消費者安全法)が全会一致で可決され、成立した。
消費者庁は、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、消費者の利益の擁護及び増進などに関する行政事務を一体的に行わせるため、内閣府の外局として設置されるものである。産業育成を主目的としてきた従来の縦割行政から独立して、消費者のための政策を企画・立案するとともに、関係行政機関の調整やこれに必要な協力を求める権限が与えられたほか、重大事故等が発生して所管する行政機関が不明の場合などには内閣総理大臣において事業者に対する勧告や命令を行うことができるものとされている。
また、消費者委員会は、政府提出法案が超党派で修正された結果、消費者庁の下部組織ではなく同等の機関とされ、内閣総理大臣に対して勧告や建議をすることができるなど権限が強化されたものであり、消費者庁をはじめ各行政機関に対する監視役、アドバイザーとしての役割が大きく期待される機関である。
この消費者庁及び消費者委員会の設置は、これまで産業育成を中心としていたわが国の政策を、消費者・生活者の利益を重視するものへと大きく転換する起点となりうるものである。かかる一元的な消費者行政組織は、弁護士会に課せられた使命の一つとして消費者の利益保護・救済に取り組んできた当会としても待ち望んできたものであり、その設置と権限の強化という方向性を高く評価したい。
もとより消費者行政が抱える問題は、中央官庁の設置のみをもって解消するわけではなく、地方自治体における消費者被害の相談・救済を担当する窓口の充実や、被害情報・事故情報を確実に集約して迅速に提供するシステムの確立など、消費生活相談その他の地方消費者行政の強化も不可欠である。また、消費者教育の増進、適格消費者団体などへの支援、加害者の不当な利益をはく奪し、効果的に被害を回復する制度なども必要である。
当会は、これらについても早期の実現を図るよう強く要望するとともに、自らも消費者被害の予防と救済のために引き続き取り組む決意であることを表明する。
2009年6月2日
札幌弁護士会 会長 高崎 暢
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