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声明・意見書2009年度

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医療観察法の見直しに関する意見書(案)について

日本弁護士連合会
会 長 宮崎 誠 殿

札幌弁護士会 
会 長 高崎 暢

 日弁連法2第155号をもってご照会のありました標記の件につきまして、下記のとおりご回答いたしますので、よろしくお取り計らい願います。

第1 照会事項1「見直し案を出すべきか、法の廃止を目指すべきか。」について

  1. 意見の趣旨
     
  2. 見直し案を出すべきである。
  3. 意見の理由
      2009年7月29日に、札幌弁護士会医療観察法委員会は、指定入院医療機関である花巻病院を視察した。その際、医療観察法病棟の見学及びケース会議・ケア会議の傍聴を通して、多職種協働による先進的な取り組みの実践の一端に触れた。当会としては、この法律による医療の枠内ではあるもののその実践自体は高く評価するものである。
      この法律による医療を一般医療に広げ、その格差を埋め、一般的な精神科医療のレベルアップを図るため、当面の改善策として、見直し案を提起するという意見書の趣旨に賛成する。
     しかし、かかる改善の提言は、この法律が憲法が保障する基本的人権を不当に制約するおそれがあるとの立場から行うものであって、早急に見直し作業にとりかかるべきである。もし、それができないようであれば、この法律は廃止されるべきである。

第2 照会事項2「医療観察法等について、どのような部分をどのように見直すべきか。」について

  1. 意見の趣旨
      意見書案における提案に基本的には賛成である。特に、鑑定入院中の治療を可能とするための根拠規定の明文化、処遇要件の明確化、検察官の申立権の適正化、社会復帰調整官の基本権限の明確化については、2の理由により支持する。
  2. 意見の理由
    (1)鑑定入院中の医療の明文化について
      捜査段階での鑑定留置に引き続いて本法の申立てがなされ、鑑定入院命令が出された場合、現行法上鑑定留置にも鑑定入院にも、その期間における治療を根拠づける規定が存在しないため、対象者が長期間何らの治療も受けることができないという状態も生じうる。急性期における治療の重要性から、刑事手続における鑑定留置期間中の医療の問題とともに、鑑定入院中に治療を施すことができるよう根拠規定を設けることは早期に改善すべき問題である。
    (2)処遇要件の明確化について
      指定入院医療機関がない北海道において、社会復帰へのソフト・ランディングのためには遠隔地の指定入院医療機関に入院させることのデメリットは極めて大きい。そのため、精神保健福祉法で対応可能な場合は、そちらを優先すべき場合が多く、最高裁判例を克服した処遇要件の明確化・適正化が必要である。
    (3)検察官の申立権の適正化について
      札幌で対象行為後10年を経過して申し立てられた事例があり(審判は不処遇決定)、そのような場合に検察官の申立権を制約する何らかの規定が必要だと思われる。
    (4)社会復帰調整官の基本権限の明確化について
      個々の社会復帰調整官の奮闘により、現状においても、当初審判段階からの環境整備は相当程度なされていると評価できる。しかし、審判において鑑定医と社会復帰調整官の見解が対立した場合に、鑑定医の判断が重視され、社会復帰調整官の意見が十分に反映されない事例も見受けられる。このような場合に、社会復帰調整官の環境整備活動が評価されることなく、入院決定がなされてしまうことがある。そのため、社会復帰調整官の権限を明確化することにより、審判における社会復帰調整官の発言力を高め、対象者の社会復帰の見地からの柔軟な総合判断を可能にする必要がある。

以 上

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