前の声明へ | 一覧へ戻る | 次の声明へ |
経済・生活苦による自殺者や自己破産者の増加などの深刻な多重債務問題を解決するため、2006年12月に出資法の上限金利の引き下げ、収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを内容とする改正貸金業法が成立した。当会においても、「高金利引き下げ等を求める意見書」(2006年5月16日)を発表して各界に働きかけるなど、同改正法の成立にあたり尽力したところである。
改正法の成立後、政府は多重債務者対策本部を設置し、同本部は多重債務相談窓口の拡充、セーフティネット貸付の充実、ヤミ金融の撲滅、金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。当会も、同様に多重債務対策本部を設置し、北海道や周辺市町村と協力して多重債務対策に取り組んできた結果、多重債務者が大幅に減少し、着実にその成果を上げつつある。
ところが、改正貸金業法の完全実施を目前に控えた今、一部から、消費者金融の成約率が低下しており、借りたい人が借りられなくなっている、特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより、資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加していることや、ヤミ金融がはびこるのではないかといったことを殊更強調して、改正法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める声が出ている。
しかしながら、2008年においても、経済・生活苦での自殺者は7000人を超え、自己破産者も減少したとはいえ約12万9000人に達している。改正貸金業法の完全施行の先延ばしや、金利規制などの貸金業者に対する規制を緩和することは、これまでの成果を無にするばかりでなく、再び自殺者や自己破産者、多重債務者の急増を招きかねないものであり、断じて許されない。
こうした多重債務対策及び地方消費者行政の充実は、今般新たに設置される消費者庁の所管ないし共管事項となるものである。
そこで、当会は、国に対し、その新たな体制の下、次に掲げる施策を求める。
2009年8月27日
札幌弁護士会 会長 高崎 暢
前の声明へ | 一覧へ戻る | 次の声明へ |