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声明・意見書2009年度

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高校無償化法案の平等な適用を求める会長声明

 政府が第174回国会に提出した、いわゆる高校無償化法案(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」)は、3月16日の衆議院本会議で与党などの賛成多数により可決され、参議院に送付された。問題となっている朝鮮学校が無償化の対象となるか否かについては、同法案の規定により「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」に該当することが必要とされている。

 この点、政府は、朝鮮学校において「日本の高校に類する教育」が行われているかどうかを判断するとの立場を取っているが、一方で、朝鮮学校を当面は無償化の対象から外す方針であるとも伝えられている。さらに、政府は、当初から朝鮮学校を除外する前提であったとの報道もあり、朝鮮学校が朝鮮民主主義人民共和国の影響下にあることとの関連性が指摘されているところである。

 また、朝鮮学校については、教育内容の確認ができないといった意見も報じられているが、朝鮮学校の教育課程に関する情報は、各種学校の認可を受ける際に必要に応じて提出されており、朝鮮学校自らもホームページ等で公開している。現に、わが国のほとんどの大学が、朝鮮学校の卒業生に入学資格を認めている。

 本法案の趣旨は、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与するため…授業料を徴収しない」(本法案の理由)ことにある。教育を受ける機会は、政治・外交問題に左右されてはならず、朝鮮学校に通う生徒についても等しく保障されるべきものである。朝鮮学校が本法案の適用対象外とされ、その生徒が高等学校、専修学校、インターナショナル・スクール、中華学校等の生徒より不利益な取扱いを受けることは、法の下の平等(憲法第14条)、ひとしく教育を受ける権利(同第26条第1項)の趣旨に反しており、国際人権規約(社会権規約第2条第2項、第13条。自由権規約第26条)、人種差別撤廃条約第5条等が禁止する差別にもあたる。また、全ての児童に対する教育についての機会の平等や、少数民族に属する児童が存在する国において自己の文化を享有し、自己の言語を使用する権利を保障した子どもの権利条約第28条、第30条の趣旨にも反するものと言わざるを得ない。

 よって、当会は、高校無償化法案の適用において、朝鮮学校が不当に排除されることのないように強く要請する。

2010年3月26日
札幌弁護士会 会長  高崎 暢

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