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声明・意見書2009年度

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裁判員裁判第1号事件にあたっての会長談話

 札幌地方裁判所で審理された裁判員裁判の「第1号事件」について、本日、懲役8年の判決が言い渡された。本件は犯罪事実そのものには争いがなかったものの、量刑判断が難しい事案であった。裁判員の方々は初めての経験であり、非常に苦労されたと思われるが、真摯に審理に参加され評議されたことに対し、敬意を表します。

 本件は裁判員裁判であることから、審理は大きく様変わりした。パワーポイントの活用、内容がコンパクトに整理された証拠や配布物、難解な法律用語を避けたプレゼンテーションや尋問、そして、犯罪被害者へ慎重な配慮など、検察・弁護双方とも、「目で見て耳で聴いて分かる」法廷審理を意識した様々な工夫を試みていた。これは、刑事訴訟法の原則である公判中心主義、直接主義に沿ったものである。
 また、裁判所は、裁判官・裁判員が入廷する前に被告人の手錠を解錠することを認めたが、これは無罪推定の原則に沿ったものと評価されるべきである。

 他方、裁判員裁判を一層充実したものするため、改善克服すべき課題も残されている。例えば、否認事件などでは、被告人調書の任意性や信用性にかかわる不毛な議論を避けるためにも、取り調べ状況の全面可視化が実現されなければならない。また、公判廷での主張・立証がどのように評議に反映されたのか、また適正かつ充実した評議がなされたかなどを検証するためにも、裁判員の守秘義務を緩和すべきである。

 弁護士会としても、今後も公判中心主義及び直接主義に沿った審理を実現すべく、一層の努力と研鑚を重ね、市民が参加する裁判員裁判の理念を全うするために、必要な制度改革なども積極的に提言していく所存である。

以 上

2009年11月20日
札幌弁護士会 会長  高崎 暢

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