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昨年(2012年)10月、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイ12機が、沖縄県普天間基地に配備された。オスプレイの配備には、沖縄県の全自治体が反対しており、昨年9月にオスプレイ配備に反対する県民大会が開催され、また、本年1月には東京に沖縄県全自治体の代表が集って反対集会が行われたことから明らかなように、沖縄県民は配備反対の強い意思を示している。
しかし、米国政府は昨年配備を強行したばかりか、本年夏には12機を普天間基地に追加配備する方針であり、さらに2015年ころには嘉手納基地にCV-22オスプレイ(空軍仕様機)を配備する計画があることが報じられている。
オスプレイは、オートローテーション機能(ヘリコプターの飛行中にエンジンが停止しても機体が落下する際の気流でプロペラが回転する揚力を利用して、安全に着陸する機能)に欠陥があることや、回転翼機モードと固定翼機モードの切り替え時の不安定さなど、専門家から重大な危険をはらんでいると指摘されてきた。現に、オスプレイは、その開発段階から事故を繰り返し、量産体制に移行した後も、2010年4月にアフガニスタンでの墜落事故により乗組員4人が死亡、2012年4月にモロッコでの墜落事故により乗組員2人が死亡、同年6月にフロリダ州で墜落事故により乗組員5人が負傷、同年7月にノースカロライナ州で民間空港に緊急着陸、同年9月には同州の市街地に緊急着陸するなど、墜落事故の危険が特に危惧されていたにもかかわらず、その危険性に関する十分な説明がないまま配備が強行された。
普天間基地は、宜野湾市の市街地に位置し、ひとたび墜落等の事故が起きれば大惨事にいたる危険性が高く、「世界一危険な飛行場」と言われている(2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決)。現に、2004年8月、大型ヘリコプターが沖縄国際大学構内に墜落する事故が発生し、その危険性は現実のものとなった。その普天間基地に危険性が指摘されているオスプレイを強行配備することは、周辺住民の生命・身体の安全を無視するものとして許されるべきことではない。
普天間基地に配備されたオスプレイは、その配備からの2か月間で、基地外における回転翼機モードでの飛行、病院や学校の上空での飛行など、日米間の合意で「できる限り避ける」とされた飛行が300件以上確認されており、安全確保のための最低限のルールさえ守られておらず、悲惨な事故がいつ起きてもおかしくない状況にある。
しかも、オスプレイは、東北地方、北陸地方、紀伊半島、四国地方、九州地方など全国6つのルートで、年間合計330回の低空飛行訓練を行う計画が明示され、この3月に訓練が開始された。
このことは、日本領土の至るところで、日常的に、危険性の高いオスプレイの低空飛行訓練が実施されることを意味するものである。
また、オスプレイのホバリング時やエンジンテスト時の騒音被害も懸念される。
日本政府は、国民が生命・身体・日常生活等を害されることなく平和のうちに安全に生存する権利(憲法前文、第9条、第13条等)を確保する責務を国民に対して直接負っているところ、このように重大な危険性をはらんでいるオスプレイの配備、飛行によって国民の権利が危険に晒されているのであるから、米国政府に対して必要な措置を求めることは、日本政府の責務である。
それにもかかわらず、野田首相(当時)が「(オスプレイの)配備は米政府の方針であり、同盟関係にあるとはいえ(日本から)どうしろこうしろという話では基本的にはない」と述べ、また、岡田副総理(当時)が「(オスプレイを)配備することについてだめだという権利は日本にはない」と発言したことが報じられるなど、日本政府はその責務を全く果たしていないと言わざるを得ない。そして、オスプレイについてのこのような姿勢は、現政権においても変わるところはない。
そもそもこの問題の根底には、日米地位協定上、米軍について航空法の多くの条項が適用除外とされるなど、わが国が主体的に主権を行使することが制約されているという不平等かつ不合理な制度上の問題があり、ただちに日米地位協定を見直さなければならない。
よって、当会は、米国政府に対し、オスプレイのわが国への配備を即時中止するよう強く求めるとともに、日本政府に対し、ただちに、米国政府にオスプレイの配備中止を要求すること、及び日米地位協定を見直すことを求めるものである。
2013年(平成25年)3月29日
札幌弁護士会 会長 長田 正寛
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